「公務員を辞めるなんてもったいない」

公務員を辞めようか迷っていると、この言葉が頭に浮かぶことがあるのではないでしょうか。

実際、私自身も市役所を辞める前に、

「せっかく長く働いてきたのに、辞めるのはもったいないのではないか」

と考えました。

退職の相談を上司にしたときには、

「これまで積み上げてきたキャリアや経験を手放すのは、もったいないのではないか」

という趣旨のことを言われました。

先輩や同僚からも、

「安定した仕事を辞めるのはもったいない」

と言われました。

たしかに、公務員を続けることには多くのメリットがあります。

一方で、私は長く市役所で働く中で、

「安定しているからという理由だけで、自分に合わない仕事や働き方をこのまま続けてよいのだろうか」

とも考えるようになりました。

この記事では、市役所で15年以上働いた後に退職した私自身の経験も交えながら、公務員を辞めることは本当にもったいないのかを考えてみます。

結論からいえば、

「公務員を辞める=もったいない」と一律に決めるのではなく、辞めることで失うものと、続けることで失う可能性があるものの両方を見ることが大切

だと私は考えています。

この記事でわかること
  • 公務員を辞めるのが「もったいない」と感じる理由
  • 私自身が退職前にもったいないと感じたこと
  • 公務員を辞めて実際に失ったと感じるもの
  • 退職したことで解消したこと、得られたもの
  • 長く働いてきた経験をどう考えるか
  • 自分にとっての「もったいない」を考える方法

公務員を辞めるのが「もったいない」と感じるのは自然なこと

公務員を辞めることを「もったいない」と感じるのには、それなりの理由があります。

私自身、市役所を辞めるときに、実際にもったいないと思ったことがありました。

具体的には、

  • 年2回の賞与
  • 毎月の安定した給与
  • 比較的カレンダーどおりに取りやすい土日祝の休日
  • 長く勤務したことで仕事や職場に慣れていること
  • 大きな問題がなければ定年まで働ける可能性が高いこと

などです。

もちろん、勤務先や職種、部署などによって状況は異なります。

それでも、収入や雇用の安定性という点は、公務員を続ける大きなメリットの一つだと思います。

長く働けば、仕事の進め方や組織の仕組みも分かってきます。

人間関係もある程度できあがり、

「次に何をすればよいのか」

「誰に確認すればよいのか」

といったことも分かるようになります。

勤続年数が長くなることで責任や仕事の負担が増える一方、慣れている職場だからこその働きやすさもありました。

そのため、

「これを手放して、本当に大丈夫なのだろうか」

と迷うのは自然なことだと思います。

私自身も「ここまで働いたのに、辞めるのはもったいない」と考えた

私が市役所を辞めることを考えたとき、周囲からも「もったいない」と言われました。

特に印象に残っているのが、

「これまで積み上げてきたキャリアや経験を手放すのは、もったいないのではないか」

という趣旨の言葉です。

その時点まで市役所で長く働き、さまざまな仕事を経験していました。

それを考えれば、

「ここまで働いてきたのだから、このまま続けたほうがよいのではないか」

という考え方もあります。

私自身もそう考えました。

毎月給与が入り、年2回の賞与がある。

職場にも仕事にも慣れている。

特別な事情がなければ、この先も働き続けられる可能性が高い。

そうした環境を自分から手放すことには、不安がありました。

しかし同時に、

「これまで長く働いてきたから」といって、自分に合わない仕事や働き方をこの先も続けてよいのだろうか

とも考えるようになりました。 

とも考えるようになりました。

過去に何年働いたかは、大切な事実です。

ただ、それだけでこれから先の働き方まで決めてしまってよいのか。

私は次第に、これまで働いてきた年数だけではなく、これからの自分の時間や人生についても考える必要があるのではないかと思うようになりました。

私が市役所で働く中で、なぜ「このまま働き続けてよいのだろうか」と考えるようになったのか、そして退職を考えるまでにどんな理由が積み重なっていったのかは、こちらの記事で詳しく振り返っています。

関連記事:市役所を辞めたいと思った理由|15年以上働いた元職員が退職を考えるまで

「辞めるのはもったいない」だけで続けることにもコストがある

私も毎日、一生懸命仕事をしていました。

それでも長く働くうちに、

「自分自身は成長しているのだろうか」

と感じるようになりました。

定年までこの働き方を続けたとして、

「自分の生活や能力は、今よりよくなっているのだろうか」

という疑問もありました。

また、自分なりに仕事を頑張っていても、組織や職場が少しずつよくなっていくという実感を持ちにくくなっていました。

仕事や日々のストレスによって心の余裕がなくなり、生活にも影響していると感じることもありました。

さらに、私にはどうしても自分に合わないと感じる部署や仕事もありました。

公務員の場合、自分が希望する仕事だけを選んで担当できるわけではありません。

異動によって、それまでとはまったく異なる分野の仕事を担当することもあります。

また、国から示される制度や政策が複雑になる中で、地方自治体が対応する業務も増えていきます。

社会の変化に伴って新しい課題への対応も求められる一方、人員配置などの状況によっては、一人あたりの業務負担が大きくなることもあります。

こうした経験から私は、

辞めることで失うものだけでなく、今の働き方を続けることで失う可能性があるものも考えたほうがよい

と思うようになりました。

たとえば、

  • 自分の時間
  • 新しいことを学ぶ機会
  • 別の仕事を経験する機会
  • 自分に合った働き方を探す機会
  • 心や生活の余裕

などです。

「辞めるのはもったいない」という考え方だけでは、こうしたものは見えにくくなります。

公務員を辞めることで、実際に失ったと感じるものもある

もちろん、私は、

「公務員を辞めればすべてよくなる」

とは考えていません。

実際に退職して、失ったと感じるものもありました。

最も分かりやすいのは、

安定した給与と年2回の賞与、そして安定収入があることによる安心感

です。

転職すれば、再び安定した収入や賞与を得られる可能性はあります。

しかし、退職した時点では、それまで定期的に入っていた収入をいったん手放すことになります。

収入の額だけではなく、

「来月も一定の給与が入る」

という安心感そのものも、公務員として働いていたから得られていたものだったと感じます。

また、意外だったのは、

仕事が終わった金曜日の解放感

です。

大変な1週間を終えたあとの、

「ようやく休みだ」

という感覚は、働いていたからこそ感じられたものでもありました。

そして、仕事上で誰かから頼られることも、退職してから改めて振り返ると、私にとって仕事のやりがいの一つだったことに気づきました。

市役所では、上司や先輩、同僚、後輩、市民や事業者などの相手方から、相談されたり質問されたりすることがありました。

当時は業務量も多く、残業もあり、頼まれることや質問されること自体を負担に感じることもありました。

それでも、

「自分を必要としてくれる人がいる」

「これまで身につけた知識や経験が誰かの役に立つ」

という感覚は、仕事を続ける理由の一つになっていたのだと思います。

これは、辞めてから改めて気づいた、仕事のよかった部分でした。

一方で、退職したことで解消したこともある

反対に、退職したことで解消したこともあります。

たとえば、

日曜日の夜や月曜日の朝に感じていた憂鬱さ

です。

仕事をしていた頃は、休日であっても、

「明日からまた仕事だ」

と考えることがありました。

また、行政の職務に伴う強い責任やプレッシャーから離れることにもなりました。

もちろん、責任そのものが悪いわけではありません。

責任を持って仕事をすることには意味があります。

ただ、長く仕事のことを考え続けていた私にとっては、そこから離れることで初めて、

「自分はかなり多くの時間とエネルギーを仕事に使っていたのだな」

と気づくことができました。

また、職場内の派閥や人間関係、立場や評価を意識した競争など、私自身が負担に感じていたものから離れられたことも、退職後に感じた変化の一つでした。

働いているときには日常の一部になっていて気づきにくかったことも、距離を置いてみることで、

「自分にとってかなり負担になっていたのだな」

と分かることがあります。

退職したことで、自分のために使える時間と余裕が増えた

退職して大きく変わったことの一つが、自分のために使える時間と頭の余裕が増えたことでした。

市役所で働いていた頃は、仕事について考えることで頭の中がかなり占められていました。

勤務時間だけでなく、

「明日の仕事をどうするか」

「この案件は大丈夫だろうか」

と考えることもありました。

退職してからは、その分だけ余裕ができ、

  • 新しい仕事
  • 新しいスキル
  • 新しい働き方
  • 新しい考え方
  • 今まで知らなかった情報

について考える時間が増えました。

自分自身を振り返り、

「自分はこれからどう生きたいのか」

「どのような働き方が自分に合っているのか」

について考える機会も増えました。

それまで知らなかった仕事や働き方について知ることで、視野も広がりました。

新しい人や情報に触れ、これまでとは違った価値観について考える機会も増えています。

さらに、仕事から一度離れたことで、

  • 健康
  • お金
  • 家族
  • 自分の人生
  • 自分の時間

について改めて考えるようになりました。

そして私は、

最高の贅沢の一つは、自分も家族も健康で、自分のために使える時間があることなのかもしれない

と感じるようになりました。

ここでいう「時間がある」とは、単純に予定がないという意味ではありません。

時間に過度に追われず、自分にとって大切なことに時間を使える状態です。

これは、市役所で忙しく働いていた頃には、十分に考える余裕がなかったことでした。

長く働いた経験は、辞めたからといってなくなるわけではない

長く働いているほど、

「ここまで続けたのだから、辞めるのはもったいない」

と思いやすくなります。

私自身、市役所で長く働いてきました。

そのため、これまで積み上げてきた経験を手放すことへの抵抗もありました。

しかし、退職後に改めて考えてみると、これまでの経験がすべてなくなったわけではありません。

市役所で身につけた、

  • 文書や資料を作る経験
  • 会議や調整の経験
  • 税務・会計に関する知識
  • 法律や制度を読み解く経験
  • 問い合わせへの対応
  • 期限を意識して仕事を進める習慣

などは、その後の仕事や生活でも役立つ部分があります。

勤務先を辞めても、そこで経験したことまで消えてしまうわけではありません。

所属する組織や肩書きは変わっても、そこで身につけた考え方や仕事の進め方、知識や経験までゼロになるわけではありません。

むしろ、

「これまでの経験を、次の仕事や生活にどう生かすか」

を考えることのほうが重要なのではないかと思います。

過去に何年働いたかだけではなく、

これからの10年、20年をどう働きたいのか

という視点も持っておきたいところです。

公務員を続けることにも、十分なメリットがある

ここまで読むと、

「やはり辞めたほうがよいという話なのでは?」

と思うかもしれません。

そうではありません。

公務員という働き方には、

  • 安定した給与
  • 賞与
  • 雇用の安定性
  • 比較的予定を立てやすい休日
  • 長く働くことで得られる経験
  • 社会や地域に関わる仕事
  • 公共のために働くやりがい

など、多くのメリットがあります。

こうしたものを自分が大切だと思っているのであれば、公務員を続けることも一つの大切な選択肢です。

また、現在抱えている悩みが、異動や働き方の調整などによって改善できるのであれば、すぐに退職する必要はないかもしれません。

「辞めるか、続けるか」を考えるときには、今の問題が本当に退職しなければ解決できないものなのかを整理しておくことも大切です。

「公務員を辞めたい」と感じているものの、何から整理すればよいか分からない方は、こちらの記事も参考にしてください。

関連記事:公務員を辞めたい人へ|元市役所職員が考える、辞める前の7つの判断ポイント

大切なのは、

「周囲が公務員は安定していると言うから続ける」

でも、

「仕事がつらいからすぐに辞める」

でもなく、

自分が何を大切にして働きたいのかを考えること

だと思います。

「もったいない」の基準を、自分で考えてみる

公務員を辞めることがもったいないかどうかは、人によって違います。

安定した収入を失うことを最も「もったいない」と感じる人もいるでしょう。

一方で、

  • 自分の時間を十分に使えないこと。
  • 新しいことに挑戦できないこと。
  • 自分に合わない働き方を何年も続けること。

それらを「もったいない」と感じる人もいると思います。

つまり、

何を失うことを「もったいない」と感じるのかによって、答えは変わります。

「公務員を辞めたら失うもの」だけを書き出すのではなく、

  • 公務員を辞めることで失うもの
  • 公務員を続けることで得られるもの
  • 公務員を辞めることで得られる可能性があるもの
  • 公務員を続けることで失う可能性があるもの

という4つの視点から考えてみると、見え方が変わってきます。

人によっては、

「やはり今の仕事を続けたほうがよい」

という結論になるかもしれません。

一方で、

「別の働き方を探してみたい」

という気持ちがより明確になる人もいるでしょう。

どちらでもよいと思います。

大切なのは、周囲の「もったいない」ではなく、自分にとっての「もったいない」を考えることです。

「辞めるか、続けるか」だけでなく、これからどう生きたいかを考える

私は市役所を退職しました。

しかし、

「公務員を辞めたことが正解だったから、ほかの人も辞めるべきだ」

とは考えていません。

人によって、生活状況も、家族構成も、収入も、健康状態も、仕事に求めるものも違います。

だからこそ、

「公務員を辞めるのはもったいないか」という一般論だけで決めるのではなく、自分の場合はどうなのかを考える

ことが大切です。

辞めることで失うもの。

続けることで得られるもの。

辞めることで得られる可能性があるもの。

そして、続けることで失う可能性があるもの。

それぞれを書き出してみると、自分が何を大切にしているのかが少しずつ見えてきます。

もしまだ、

「辞めたいけれど、本当に辞めてよいのだろうか」

と迷っている段階であれば、すぐに結論を出す必要はありません。

今の職場でできることを考える。

転職市場を調べる。

自分の経験やスキルを整理する。

ほかにどのような仕事や働き方があるのかを知る。

そうやって現在地を確認してから判断しても遅くありません。

「公務員だから続ける」「もったいないから辞めない」と決めるのではなく、自分がこれからどのような人生や働き方を選びたいのか。

その視点から考えてみることが大切なのではないかと思います。

そのうえで、自分なりの次の航路を考えていけばよいのではないでしょうか。

ABOUT ME
ミチト
民間企業で営業事務・業務管理・採用関連などの業務に携わり、転職を経験した後、地方自治体(市役所)の一般行政職へ転職しました。 市役所では15年以上勤務し、税務・収納、総務、企画、契約、財政など、複数分野の行政事務を経験しました。 市役所退職後は、公務員・民間企業双方での経験を生かしながら、40代からのキャリア・転職・働き方、事務職のスキル、AI・IT活用、在宅での働き方などについて学び、実践しています。 現在、「しごと航路」で、これまでの実体験や学び、気づき、反省も含め、働き方やキャリアを考えるための情報を発信しています。