市役所を辞めたいと思った理由|15年以上働いた元職員が退職を考えるまで
「市役所を辞めたい」
そう思うようになった理由は、私の場合、一つではありませんでした。
私は民間企業での勤務や転職を経験した後、市役所の一般行政職として15年以上勤務しました。
市役所を辞めたいという気持ちを強く意識するようになったのは、勤続10年ほどが過ぎた頃だったと思います。
何か一つ大きな出来事があり、突然辞めようと思ったわけではありません。
異動、仕事内容、仕事量、残業、評価、自分自身の成長、将来への不安、そして仕事と生活のバランス。
いくつもの違和感や疑問が重なり、心身の疲労も少しずつ積み重なっていきました。
そして、
「このまま定年まで働き続けてよいのだろうか」
と考えるようになりました。
一方で、仕事そのものが嫌で仕方がなかったわけでもありません。
安定した収入や賞与があり、仕事にも職場にも慣れていました。仲のよい先輩や同僚にも恵まれ、仕事をしていて楽しいと感じることもありました。
だからこそ、長い間迷いました。
この記事では、「市役所を辞めるべきか」という結論を出すのではなく、私自身がなぜ市役所を辞めたいと思うようになったのか、その理由と経緯を振り返ります。
自治体や部署、職種、職場環境によって状況は異なります。ここで書くことは、あくまで私自身が働く中で経験し、感じたことです。
- 私が市役所を辞めたいと思うようになった理由
- 異動や専門性について感じていたこと
- 仕事量や評価に疑問を感じた経験
- 市役所の外でも通用する力への不安
- 仕事と生活のバランスについて感じていたこと
- すぐに辞めず、何年も迷った理由
- 最終的に退職を考えるようになった経緯
- 異動を繰り返す中で、専門性を積み上げるイメージを持ちにくくなった
- 行きたい部署も、目指したい将来像も思い浮かばなくなった
- 自分に合わない部署や仕事を担当する可能性への不安もあった
- 仕事が増える一方で、職員数が減り、負担が大きくなっていると感じた
- 仕事を効率化する工夫や実際の負担が、評価につながらないと感じることがあった
- 市役所以外でも通用する力が身についているのか不安になった
- 土日を頼りに働くうちに、気がつくと5年、10年と時間が過ぎていた
- それでも、市役所の仕事をすぐに辞めたわけではなかった
- 何年も働く中で、「辞めたい理由」だけでなく「これからどう働きたいか」を考えるようになった
- まとめ|私が「市役所を辞めたい」と感じた理由は、一つではなかった
異動を繰り返す中で、専門性を積み上げるイメージを持ちにくくなった
地方自治体では、数年ごとに異動することがあります。
私の職場でも、若手・中堅職員を含めて、数年単位でさまざまな部署を経験していく働き方が一般的でした。
私自身も、税務・収納、総務、企画、財政など、複数分野の行政事務を経験しました。
さまざまな仕事を経験できることにはメリットがあります。
幅広い業務を経験することで、自治体全体の仕事の流れを知ることもできます。
一方で、私の場合は長く働くほど、
「自分は何の専門性を積み上げているのだろうか」
という疑問を感じるようになりました。
今いる部署の制度や業務について深く勉強しても、数年後にはまったく違う部署へ異動することがあります。
実際、その部署で数年間働いている若手職員の方が、異動してきたベテラン職員よりも、その部署の実務について詳しいという場面もありました。
これは年齢や能力の問題というより、行政の仕事には、その部署で実際に仕事をしなければ分からない制度や実務が多いということだと思います。
私自身も、担当している仕事について必要な知識を身につけても、異動すれば、その知識を直接使う機会がほとんどなくなることがありました。
そのため、
経験年数が増えることと、一つの分野の専門性が高まることは、必ずしも同じではない
と感じるようになりました。
また、行政の仕事には、法律や制度、決められた手続きに沿って進めるものも多くあります。
もちろん、その中でも仕事の進め方を工夫したり、よりよい方法を考えたりすることはできます。
それでも私は、長く働くうちに、自分の専門性やアイデアを積み上げながら成長していく将来像を描きにくくなっていました。
行きたい部署も、目指したい将来像も思い浮かばなくなった
異動を何度も経験する中で、次第に「次に行きたい」と思える部署も少なくなっていきました。
すでに経験した仕事もあれば、先輩や同僚の話を聞く中で、
「自分には負担が大きそうだ」
と感じる仕事もありました。
福祉、環境、防災など、自治体にはさまざまな仕事があります。
どれも地域や住民の生活を支えるために必要な仕事です。
ただ、責任の重さ、緊急対応、住民対応、衛生面、休日勤務など、仕事によって求められるものは大きく違います。
私は、すべての行政分野が自分に合っているとは思えませんでした。
そしてある時、自分のこれからを考えてみると、
「行きたい部署がない」
「担当したい仕事も思い浮かばない」
「この人のようになりたいと思える将来像も描けない」
という状態になっていることに気づきました。
そのとき、
「私は、この先どこを目指して働いていけばいいのだろうか」
という疑問が大きくなりました。
また、定年まで働いた自分を想像してみても、自分が目指したい姿をはっきりと思い描くことができませんでした。
先輩や上司の働く姿や、定年後の働き方を見る機会もありましたが、それも私自身が希望する将来像とは少し違っていました。
誰かの生き方がよい、悪いということではありません。
ただ、
「自分はどう働き、どう生きたいのか」
という問いに、自分自身が答えを持てなくなっていたのだと思います。
自分に合わない部署や仕事を担当する可能性への不安もあった
市役所の一般行政職では、自分の希望する仕事だけを担当し続けられるとは限りません。
異動によって、それまで経験したことのない仕事を担当することがあります。
それは、行政職として幅広い仕事を経験できるメリットでもあります。
一方で、私の場合は、
「自分にはどうしても合わないと思う仕事も、将来担当する可能性がある」
ということが気になっていました。
緊急対応が必要な仕事。
休日勤務が多い仕事。
衛生面で負担を感じる仕事。
精神的に強い負担を感じそうな仕事。
先輩や同僚から仕事内容を聞く中で、「自分には負担が大きそうだ」と感じる分野もありました。
たとえば、福祉分野では、生活に大きな困難を抱えている方への対応など、慎重な判断や精神的な負担を伴う仕事があります。
防災分野では、災害や緊急時には、曜日や時間にかかわらず対応が必要になることがあります。
また、環境分野には、衛生面を含め、私自身が負担を感じそうな現場対応もありました。
もちろん、こうした仕事にやりがいや使命感を感じる職員もいます。
これはあくまで、私自身の適性や感じ方の話です。
人によって得意なことや、負担に感じることは違います。
私の場合は、毎年、人事異動の発表が近づく時期になると、
「次はどこに異動するのだろう」
という強い不安やストレスを感じることもありました。
今後も異動を繰り返し、自分に合わない部署を担当する可能性を抱えたまま定年まで働くことを考えると、将来への不安は少しずつ大きくなっていきました。
仕事が増える一方で、職員数が減り、負担が大きくなっていると感じた
市役所で長く働く中では、仕事そのものも変化していきました。
私が働き始めた頃と比べると、国の制度や政策に伴って自治体が対応する業務が増えたと感じることがありました。
都道府県から市区町村へ移る業務もありました。
税や福祉をはじめ、制度そのものが複雑になったり、制度改正によって短期間に多くの対応が必要になったりすることもあります。
一方で、私が働いていた自治体では、長期的に見ると正職員数は減少していました。
具体的な割合はここでは控えますが、私自身は、
「担当する仕事は増えているのに、それを担う人には余裕がなくなっている」
と感じていました。
もちろん、部署や時期によって仕事量は違います。
残業削減や働き方改革などの取り組みもありました。
それでも、職員一人ひとりの業務負担そのものが減らなければ、残業時間や現場の負担感まで自然に減るとは限りません。
水道、防災、観光など、業務の性質上、休日や通常勤務時間外の対応が必要になる分野もあります。
私自身も、
「今日も残業になるのか」
「また帰るのが遅くなる」
と感じることが増えていました。
こうした状況を見ながら、
「これから行政の仕事はどうなっていくのだろうか」
と考えたとき、私は、自分がこの働き方を続ける将来に明るい見通しを持てませんでした。
仕事を効率化する工夫や実際の負担が、評価につながらないと感じることがあった
仕事の割り振りや評価についても、疑問を感じることがありました。
ある時期、私は仕事の進め方を工夫し、できるだけ勤務時間内に仕事を終わらせるようにしていました。
ところが、仕事を早く終わらせて定時で帰っていると、
「仕事の分担が少ないのではないか」
という見方をされ、別の仕事や、ほかの職員の業務を追加で担当するなど、担当する仕事が増えることがありました。
その結果、自分の業務量が増え、勤務時間内では終わらなくなることも多くなりました。
そして、その結果として残業が増えても、今度は、
「仕事に時間がかかっている」
と見られることもあります。
この経験から私は、
「効率よく仕事をすること、多くの仕事を抱えること、努力することが、必ずしもそのまま評価につながるわけではない」
と感じるようになりました。
もちろん、管理職の立場からすれば、部署全体の仕事を滞りなく進めることも重要です。
また、仕事量や難しさ、ほかの職員をカバーした負担などまで含めて、個々の仕事をすべて正確に把握することは簡単ではないと思います。
それでも、自分なりに工夫して仕事を早く終わらせても、その結果としてさらに仕事が増えていくように感じると、
「何のために効率よく仕事をしているのだろう」
と思うようになりました。
ほかの職員の仕事を追加で引き受けても、それが仕事の分担や人事評価に十分反映されているという実感も持ちにくくなっていました。
そうした経験が重なるにつれて、仕事を効率化することや、より多くの仕事を引き受けることへのモチベーションも、少しずつ下がっていきました。
市役所以外でも通用する力が身についているのか不安になった
市役所で働き続ける中では、
「ここで身につけている知識や経験は、市役所の外でも使えるのだろうか」
という不安もありました。
行政事務には、文書作成、制度や法令を読み解く力、問い合わせ対応、関係者との調整、期限管理、正確な事務処理など、ほかの仕事でも生かせる能力があります。
民間企業で働いた経験も含めて振り返ると、公務員の経験がすべて特殊だったわけではありません。
公務員と民間企業のどちらでも生かせる共通のスキルもありました。
また、市役所で身につけた経験の中にも、民間企業や別の仕事で生かせるものはたくさんありました。
ただ、当時の私は、市役所で積み重ねてきた経験の中でも、市役所ならではの業務や知識にばかり意識が向いていました。
そのため、市役所での経験や身につけた力を、別の働き方や仕事でどのように生かせるのか、どの程度通用するのかについて、自信を持てずにいました。
また、市役所では多くの個人情報を扱います。
情報セキュリティ上の理由から、利用できるネットワークや端末、ソフトウェアなどが制限される環境もあります。
これは重要な安全対策です。
ただ、私自身はその環境の中で働きながら、
「一般的なITツールや、新しい仕事の進め方に触れる機会が少ないのではないか」
と感じることもありました。
勤続年数は増えている。
経験した仕事も増えている。
それでも、
「働いた年数に比例して、さまざまな環境でも使える能力も同じように増えているのだろうか」
と考えると、自信を持てませんでした。
この不安も、市役所を辞めたいと考える理由の一つになりました。
土日を頼りに働くうちに、気がつくと5年、10年と時間が過ぎていた
仕事だけではなく、自分の生活についても考えるようになりました。
平日は、仕事を終える頃になると、
「今日も遅くなった。早く帰って寝なければ」
と思うことが多く、仕事以外のことをじっくり考える余裕はあまりありませんでした。
金曜日になると、
「やっと1週間が終わった」
とほっとしました。
「何もトラブルがなければ、週末は休める」
と思うこともありました。
土日は休めるものの、平日の疲れや寝不足を解消するために睡眠を取り、平日にできなかった家事や生活上の用事を済ませると、それだけで休日が終わってしまうこともありました。
日曜日の夜になると、
「明日からまた仕事か」
と思います。
月曜日の朝には、
「また忙しい一週間が始まる」
「何も問題が起きなければいいけれど」
という気持ちになることもありました。
そうした生活を繰り返しているうちに、ふと気づきました。
土日を楽しみに、土日の休息を頼りに平日の仕事を続けているうちに、5年、10年と時間が過ぎていた。
仕事はしている。
生活もしている。
それでも、
「時間は過ぎているのに、自分の人生は前に進んでいないのではないか」
と感じました。
そして、
「この働き方は、自分が本当に望んでいるものなのか。これは、自分が目指したい生活なのか」
と考えるようになりました。
これからどう働きたいのか。
どんな生活をしたいのか。
自分は何に時間を使いたいのか。
どんな人生にしたいのか。
そうした自分自身の課題に、十分に向き合えていなかったように思います。
これは、私が市役所を辞めることを考えるうえで、とても大きな理由になりました。
※心身の不調や過労、ハラスメントなど、健康や安全に関わる状況にある場合は、退職・転職・今後のキャリアについて結論を出すことよりも、まず自分の安全確保や休養、必要に応じた相談先の利用を優先してください。
それでも、市役所の仕事をすぐに辞めたわけではなかった
ここまで書くと、
「それなら、もっと早く辞めればよかったのでは」
と思うかもしれません。
しかし、現実はそれほど単純ではありませんでした。
市役所を続けることには、私にとって明確なメリットもありました。
毎月の安定した収入があり、賞与もあります。
部署による違いはありますが、土日祝日に休めることも多く、長く働いていたため仕事や職場にも慣れていました。
仕事が嫌で仕方がなかったわけでもありません。
仲のよい先輩や同僚もいて、そうした人たちのおかげで続けられた部分も大きかったと思います。
人から頼られたり、自分の知識や経験が役立ったりすると、やりがいを感じることもありました。
だから私は、
「辞めたい」
と思ったからすぐに退職したわけではありません。
安定した環境を離れる不安と、
「このまま働き続けてよいのか」
という気持ちの間で、長く迷っていました。
「公務員を辞めるのはもったいないのではないか」と考えていた当時の気持ちについては、別の記事で詳しく整理しています。
関連記事:公務員を辞めるのはもったいない?元市役所職員が退職して感じた「失ったもの・得たもの」
何年も働く中で、「辞めたい理由」だけでなく「これからどう働きたいか」を考えるようになった
私が本当に退職を考えるようになったのは、何か一つの出来事があったからではありません。
これまで書いてきたような違和感や疑問が、何年にもわたって少しずつ積み重なっていきました。
ただ、退職を考えるようになった理由は、今の職場に対する不満だけではありませんでした。
長く働く中で、次第に、
「今の仕事の何が嫌なのか」
だけではなく、
「これから自分はどんな働き方や生活をしたいのか」
を考えるようになりました。
組織が変わることを期待するだけではなく、自分自身でこれからの人生を考えなければならない。
自分の課題に取り組みたい。
仕事やストレスに追われるだけではなく、自分自身と向き合いながら生きていきたい。
新しいことを学びたい。
成長したい。
仕事だけではなく、生活も含めて自分なりの豊かさを考えたい。
時間に追われすぎず、自分の生活や人生を丁寧に進めていきたい。
そして、自分が本当にやってみたい仕事にも挑戦してみたい。
そうした思いが、少しずつ強くなっていきました。
私の場合は、「市役所を辞めたい理由」が増えていっただけではなく、「これから実現したい働き方や生活」も少しずつ見えてきたことが、退職を考えるうえで大きかったのだと思います。
まとめ|私が「市役所を辞めたい」と感じた理由は、一つではなかった
振り返ってみると、私が市役所を辞めたいと思うようになった理由は、一つではありませんでした。
異動の多い働き方や、自分に合わない仕事を担当する可能性、専門性や将来像への疑問、仕事量や残業、仕事の負担と評価への違和感、市役所の外でも通用する力への不安など、さまざまなことが少しずつ積み重なっていきました。
そして、仕事に多くの時間とエネルギーを使う中で、自分自身の人生や、これからどのように働きたいのかを考える余裕を持ちにくくなっていたことも、大きな理由の一つでした。
こうしたさまざまな理由を総合して考えるうちに、
市役所で働き続けることで得られるものと、自分が失っていると感じるもののバランスが、少しずつ変わっていきました。
私にとっては、仕事や職場環境から受ける負担の方が大きくなっていると感じるようになりました。
同時に、
「仕事だけでなく生活も大切にしたい」
「自分自身の成長や自己実現にも時間を使いたい」
「やってみたい仕事に挑戦したい」
という思いも強くなりました。
もちろん、当時の自分にも至らない点や未熟な部分はあったと思います。
考え方や仕事の進め方など、自分自身で改善できることもあったのかもしれません。
工夫や努力を続けながら、市役所で働く中で別の道を見つけることもできた可能性はあります。
それでも当時の私は、時間に追われ、心身ともに疲れている中で、自分の人生について改めて考え、
「これからは、自分が望む働き方や生活へ向けて動いてみよう」
と決めました。
私にとって退職は、
何かから逃げるためだけではなく、これから実現したいことに向かうための選択でもありました。
ただ、これは、
「同じように感じている人は、市役所を辞めた方がよい」
という意味ではありません。
同じ市役所職員でも、仕事内容、職場環境、家庭状況、価値観、これから目指したいものは人によって違います。
私自身、市役所を続けることにも多くのメリットがあると考えています。
大切なのは、
自分は何に違和感を感じ、何を変えたいと思っているのかを、一つずつ整理すること
だと思います。
そのうえで、
異動や仕事の進め方を見直すことで改善できるのか。
自分の考え方や仕事との向き合い方を見直すことで変えられることがあるのか。
それとも、環境そのものを変える必要があるのか。
一つずつ考えてみる。
「辞める」「転職する」ということも、そのための選択肢の一つだと思います。
「市役所を辞めたい」と感じているものの、何から整理すればよいか分からない方は、辞める前の判断ポイントをまとめたこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:公務員を辞めたい人へ|元市役所職員が考える、辞める前の7つの判断ポイント
私の場合も、自分が何に違和感を感じ、何を変えたいと思っているのかを整理していく中で、少しずつ自分が望む働き方が見えてきました。
「市役所を辞めたい」という気持ちの中に、どんな理由や思いがあるのか。まずはそこから、自分なりの次の航路を考えていけばよいのではないでしょうか。
